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エンゼルバンク転職代理人海老原嗣生不況転職術出世

みんなの評価:★★★★★

「エンゼルバンク」のカリスマ転職代理人がエンジニアに指南!
マスコミが伝えない「不況期」転職のチャンスと活用法
深刻な経済不況に伴い、中途採用市場も厳しい状況が伝えられている。だが不況期だからこその利点もある。人気漫画「エンゼルバンク」のモデル・カリスマ転職代理人、海老原氏がエンジニアのための転職術を指南する。
(取材・文/総研スタッフ 宮みゆき 撮影/関本陽介)作成日:09.02.17

不況期は「実力ある企業」を見極める絶好のチャンスだ!

 アメリカの金融危機を発端に、世界を覆った経済大不況。日本経済も急速に悪化し、雇用問題も深刻化している。「売り手市場」だったエンジニアの中途採用市場も、暗雲に満ちてきた。この不況はいつまで続くのか、不況期の転職は不利なのか? 週刊モーニング連載中「エンゼルバンク」“海老沢康生”のモデルでもあるカリスマ転職代理人、海老原嗣生氏に、エンジニア適職フェアで語ってもらった。

海老原嗣生氏

1964年生まれ。上智大学卒業後、大手メーカーを経てリクルートエイブリック(現リクルートエージェント)に入社。コピーライターとしてTCC新人賞を受賞、また事業企画や新規事業を立ち上げた後、リクルートワークス研究所へ出向、「WORKS」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。
現在は人材育成学会理事、(株)リクルートエージェント ソーシャルエグゼクティブとして勤務する傍ら、HRコンサルティング事業を手掛ける(株)ニッチモを立ち上げ、人事雑誌『HRmics』の創刊、および事業コンサルティングに携わっている。また週刊モーニング連載『エンゼルバンク』でカリスマ転職エージェントのモデルとして登場中。


マスコミが伝える嘘に惑わされちゃいけない

 最近よくテレビで「未成年の凶悪犯罪」が報道されてますよね。実際に「増えている」と思う人、手を上げてください。(会場の半数以上が手を上げる)でも、実際未成年の殺人事件は、ピーク時の1/6に減っているんですよ。強盗、傷害、暴行なども激減していて、一番特徴的なのは強姦。50年前の1/40くらいに少なくなっています。マスコミの話って、実はかなり嘘が多いんですよ。エンゼルバンクでもよく出てきますが、僕はそんなのが得意でデータを集めて取り上げています。

 雇用についても同じです。私が編集長を務める『HRmics』でも取り上げていますが、昨今伝えられている「終身雇用」はまったく崩壊していません。「転職率は一般化していない」し、50年前から「若者は3年で転職」しているんです。こんなかんじで、マスコミの話は信用せずに、「本当の話」だけをしていきたいと思います。


「100年に一度の大不況」の正体とは

 現在の不況、100年に一度の大不況と騒がれています。1929年の世界大恐慌以来の不況だと。そして、この不況は10年先、20年先まで長引くんじゃないか、こんな話がよくされます。でも実際、かつての大恐慌ってどれくらいのものだったのかは、マスコミは全然報じませんよね。

 1929年10月に始まった大不況。最初に不況から立ち直ったのはどこだったのか?実はこれ日本なんです。日本は1931年9月に満州事変を起こし、戦時経済が入ったので、猛烈に金を使ったことで、景気が回復し出した。なんと、たったの2年間で回復しているんです。次はドイツです。1933年1月にナチスドイツの登場により戦時経済が始まり、お金を莫大に使った結果、景気が回復します。結果、3年3ヶ月で不況から脱しています。

 では、一番長かったアメリカはどうだったか?フランクリンルーズベルトが大統領になった1933年3月、今のオバマ大統領と同じニューディール政策をはじめました。アメリカは戦時経済ではありませんが、それが効いて5月から景気が回復し始めます。この間、3年と7カ月です。ということは、一番不況が長引いたアメリカでさえ、たった3年少々で不況なんて終わっている。現在の不況が10年、20年も長引くなんて、あまりにくだらないことなんです。

 ちなみに、日本の経済不況をCi値(経済が好況か不況かを示す値)でもんでみると、2007年9月にピークを打っています。すでに1年4カ月過ぎてます。ということは、不況はもう半分くらい終わった状況と考えてください。


「景気はあと1年半で回復する」の根拠

 さきほど世界経済が立ち直るときに、戦争で莫大なお金を使ったとお話ししました。今回も莫大なお金を使いますが、戦争ではありません。各国が税金を使ったり、借金などから財政出動しています。その額を総計すると、2年間で総計240兆円にもなります。これは、金融支援などの直接世間に回らないお金はのぞいています。こうしたお金も含めるとその額はなんと430兆円!

 では、「2年で240兆円」とはどれくらいの規模なのでしょうか。世界全体の経済規模は約5000兆円。5000兆円に対して240兆円ということは、5%もの財政出動です。景気のよかった2006年、2007年でも、世界各国の経済成長は200兆円くらいしかありませんでした。その景気がよかったときの経済成長よりも、さらに大きい金額が投資されるのです。

「240兆円の規模」について、もう少しお話しします。1991年と2001年にアメリカは不況でした。そのときアメリカは湾岸戦争とイラク戦争を起こしていますが、とたんに景気はよくなっています。ではこの戦争にいくら使ったか?湾岸戦争のほうが大きくて、5.5兆円です。今回の240兆円はその45倍です。

 これから法案作って240兆円を使い出すとすると、法案が通るのは4月くらい、使うのは5月くらいになります。つまり、2年といってもほんとのとこは1年半で240兆円使うことになります。たった18カ月で240兆円、1か月13兆円です。湾岸戦争の2倍以上を毎月使う。景気が悪くなり続けるとはずがないというのが、根拠。今年中には底割れは終わり、来年春には景気回復するんじゃないかというのが、大方の見通しです。つまり、あと1年半で不況は終わるはずだと。これは後ほどお話する機電系エンジニアの採用動向にも関係してきます。


「不況期に入社する人は出世する」メカニズム

 過去の不況期の転職事情を振り返ってみましょう。好景気のときは、見かけ上の人気企業の募集に人が集まります。逆にこの時期は、これから伸びる実力企業、新しい産業の企業は当然人が採れません。ところが、不景気になると見かけ上の人気企業はお腹いっぱいになって、もう採用を控えます。でも、不景気でも超元気な企業は採用を続けます。当然、そこに人が動く。

 現在募集している企業は、この不景気に採用したいといっているのだから、実力があるに決まっています。とはいえ、不況期の採用数はやはり少なくなる。そうするとどういうことが起こるか?好景気に業績拡大する頃には、同期の人数も少ない。つまり、ライバルが少ないから昇進がしやすくなります。エンジニアの方はあまり出世には興味がないかもしれませんが、「不況期に人を採用する企業は実力がある」「これから脅威的に伸びる企業を選別できる」そして、それらの実力企業が「業績拡大する頃にはライバルが少ない」ということは頭に入れておいてください。

図:「不況期入社組は、出世する」メカニズム

不況期に業績拡大を実現した実力企業

 次は、実際に不況期に伸びた企業を検証したいと思います。下記のグラフは、経済が好況か不況かを示すCi値と、過去3回の不況期にリクルートエージェントで決定シェアが10%以上伸びた業界群を重ねたものです。

 90年代前半は金融危機から、大手金融機関がどんどんつぶれていきました。その時期に積極的に採用を行っていたのが、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートなどのコンビニチェーン、ヤマダ、ノジマなどの当時まだ小さかった家電量販店、ファイザー、万有製薬などの医薬、医療分野でした。この頃はまだIT業界は動いていませんでした。

 90年代後半の不況時から、ソフトバンク、楽天、サイバーエージェントなどの中堅IT企業や、Eコマース、人材業界が成長し始めます。教育に力を入れて成長したアグレックスや、オンリーワン製品を武器に、少数精鋭で勝負したワークスアプリケーションズなども、不況期採用で業績を拡大した実力企業です。

 3つ目のITバブル崩壊時には、スターバックス、タリーズなどの流通ベンチャー、カクヤス、キンコーズなどのサービスベンチャーが採用拡大を行っていました。どうでしょう?現在では、どの企業も一流企業です。不況期に人を募集している企業は確実に伸びているということが、よくわかったのではないでしょうか。

図:過去3回の不況期に、リクルートエージェントで決定シェアが10%以上伸びた業界群

不況期入社で出世した経営者たち

 先ほど不況期に入社すると「出世」しやすいと言いましたが、実際に出世した経営者を紹介しましょう。まずは、トヨタ自動車の奥田会長です。トヨタは一流企業じゃないかと思った方も多いでしょう。でも、当時の就職で人気があったのは、製糖、紙・パルプ、石炭業界でした。奥田さん自身も「トヨタはまだ名古屋の小さな自動車会社だったけど、不況期に元気がいい会社に入るといいことがある」と言っています。京セラの稲盛さんも同時期に入社して、社長になっています。不況期は“当たり”を見つけるチャンスだと言えるでしょう。

不況期入社で出世した経営者たち
人名 社名(現職) 役職 最終学歴 入社年次 不況期
奥田硯 トヨタ自動車 会長 一橋大学 1955 スターリン〜なべ底
鈴木敏文 セブン-イレブン 会長 中央大学 1956 スターリン〜なべ底
八城雅基 新生銀行 会長 東京大学 1958 スターリン〜なべ底
吉野伊佐男 吉本興業 社長 関西大学 1965 証券
木村昌平 セコム 会長 同志社大学 1967 証券
原口兼正 セコム 社長 武蔵工業大学 1974 いざなぎ後〜石油ショック
桜井正光 リコー 社長 早稲田大学 1966 証券
高山善司 ゼンリン 社長 西南学院大学 1986 円高
常盤文克 花王 元会長 東京理科大学 1957 スターリン〜なべ底
井上礼之 ダイキン工業 会長 同志社大学 1957 スターリン〜なべ底
加賀見俊夫 オリエンタルランド 会長 慶応義塾大学 1958 スターリン〜なべ底
丸山利雄 アドバンテスト CEO 山形大学大学院 1973 いざなぎ後〜石油ショック
松井忠三 良品計画 会長 東京教育大学 1973 いざなぎ後〜石油ショック
内田恒二 キヤノン 社長 京都大学 1965 証券
福山義人 CSK 社長 慶応義塾大学 1972 いざなぎ後〜石油ショック
喜久川政樹 ウィルコム 社長 早稲田大学 1987 円高
深谷紘一 デンソー 社長 東京工業大学 1966 証券
東哲郎 東京エレクトロン 会長 東京都立大学大学院 1977 いざなぎ後〜石油ショック
岩田彰一郎 アスクル 社長 慶応義塾大学 1973 いざなぎ後〜石油ショック
林野宏 クレディセゾン 社長 埼玉大学 1965 証券
稲盛和夫 京セラ 元社長 鹿児島大学 1955 スターリン〜なべ底

ITエンジニアの転職は「職務志向」で考える

 IT業界の採用ニーズは不況期になると、外資系企業から順に、国内冠系企業、独立系、中堅中小と減っていきます。現時点では、どの企業群の顔ぶれも一応そろっていますが、中堅中小が主軸になっており、これがさらに減っていきます。2001年のITバブル崩壊と違う点は、当時はEコマースと通信業界が元気だったことです。

 下の図には入れていませんが、社内SEは独立大手と同じ動きをします。社内SEは社内システムを管理し、外注マネジメントが主な業務となるため、高い技術力は必要とされません。そのため、好況期にはあまり人が集まりませんが、不況時は比較的大手企業の求人であるため、安定と残業が少ないことなどから応募が活発化します。ただし求人人数は少ないため、一通り採りきると採用を終えます。

図:景況と採用企業群の推移

 自分に合った企業はどこか。ITエンジニアの場合は、自身の職務志向から選んでいくのがおすすめです。例えば、残業の有無、待遇の明確さ、パッケージベンダーか、SIヤーなのか、プライマリーの大小、顧客数など。チェックツールをご用意したので、試してみてください。一人ひとりの志向に完全にぴったりの企業はなかなかありません。「エンゼルバンク」でも言っていますが、「転職はリセットではなく、チューニング」です。自分が必要なもの、捨ててもいいものはないか、最低限こだわる項目はなにかをまずは見極めることが大切なんです。

職務志向チェックツール

狙い目は原子力・太陽電池・医療機器・半導体

 機電系業界はさまざまな分野があって裾野が広いため、不況でもどこかのメーカーで採用を活況化させていました。2000年から2001年の不況では自動車業界が元気だったので、同業界は電気・機械・化学と幅広い求人があったため、多くのエンジニアの受け皿となりました。ところが、今回は全体的に不況。輸出産業は総倒れという状況です。

 その中でも、少し元気なのが、重電・プラント系。同業界はインフラ投資の盛んな発展途上国向け案件が引っ張っていますが、これはしばらくすると下火になると思われます。次に、原子力プラント関連です。原子力をクローズしていた国が多い中、買収などを重ね原子力開発に力を入れていた日本が強いという背景があります。そして、太陽電池、燃料電池などのエコ関連はグリーンニューディール対策などもあり、まだ伸びていくでしょう。

 医療機器は不景気に関係なく、常に伸びる分野なので、ねらい目です。半導体はナノテク関連、特殊設計が残っています。ファウンドリ・EMS関連は厳しい状況ですが、半導体で生き残っているのは技術力の高いファブレス企業です。高付加価値を生み出す技術優位な企業は、不況期も技術で生きていけるということなのでしょう。

 ここからは、大胆な予想になりますが、機電系の下半期は、大幅に採用が増えるんじゃないかと考えています。特に10月以降、240兆円のお金をばらまく財政出動の効果が出てきます。財政出動のうち70〜80兆円が減税としても、160〜170兆円はインフラ投資になるでしょう。そうなると、重電、プラント、工作機系の企業が動くんじゃないかと。コンシューマよりの知名度が高い企業が元気になる前に採用してしまわないと、こうしたBtoB企業は人が採れなくなってしまう。そこで、景気が動く少し前に動きだすはずだというのが、私の読みなんです。採用が期待される分野をまとめてみたので、参考にしてみてください。

採用が期待される分野
  採用エンジニアの分野
重電 プラント 工作機 重機 鉄鋼 精密機器 素材 自動車 家電 精密 医療機器 通信 半導体製造 半導体設計
現在活発な案件 一般プラント                        
原子力関連                        
太陽電池                    
医療機器                      
ナノテク                        
特殊LSI                          
年後半期待の案件 エネルギー関連                    
グリーンニューディール                
インフラ                  

機電系エンジニアは「仕事の進め方」と「企業風土」

 機電系エンジニアはどんな視点で企業を選んだらいいのでしょうか。IT系は自己実現をイメージすることとお伝えしましたが、機電系は「仕事の進め方」と「企業風土」をしっかり頭に入れることが大事だと思います。仕事の進め方は、同じ業種でも「セットアップメーカー型」企業と、「パーツメーカー型」企業ではずいぶん違います。

「セットアップメーカー型」はたくさん部品点数があり、それを納入する外注企業を多数相手にするため、対人折衝力が求められます。同時に、技術オタクというよりも、技術は外注に任せて、それを組み合わせて、どんな斬新な製品を作り上げるか、という構想力が重視されます。該当する企業は、完成車メーカーや、パソコンメーカー。そして、ポケットPCなど世界観を提示できるソニーや、ipodなどの生活提案をしたアップル、家族と遊ぶ・体を使うなどのゲームを創った任天堂なども該当します。こうした企業で経験を積んだ人は、多彩な外注企業とコネがあること、BPR(business process re-engineering)やKPI(key performance indicator/重要業績評価指標)など業務管理・効率化が得意なこと、などが転職時のウリとして挙げられます。

 逆に「パーツメーカー型」は1つの製品をじっくり作り上げる技術指向、構想されたものをつくりあげる実現力、どうやって実現するかというこだわりが必要となります。サプライヤーや、多くの家電メーカー、精密機器、医療機器、建機・重機などが該当します。こちらはやはり技術力が重視されます。

 企業風土は下記のように「日本型」と「欧米型」を挙げましたが、ほとんどの製造業は「日本型」だと思います。それでも、欧米型な部分を求める人は確認してみるといいでしょう。ただし、いきなり企業風土から聞くのではなく、1次面接で仕事の進め方から聞き、2次面接か3次面接で確認するのが望ましいです。いきなり企業風土から聞くのは、印象を悪くする可能性があるからです。

 不況期の転職は、本当に実力ある企業を見つけるチャンス。「転職はリセットではなく、チューニング」。自分の指向や仕事の進め方にあった転職を成功させるヒントとして活用してもらえたら幸いです。

仕事の進め方
  セットアップメーカー型 パーツメーカー型
キーとなる
能力
マネジメント力
構想力
対人折衝
技術指向
実現力
内省・こだわり
該当する企業 完成車メーカー
パソコン
ソニー、アップル
任天堂
サプライヤー
多くの家電
精密、医療機
建機・重機
付加要素 パートナーコネクション
BPR
KPI設定
技術力
企業風土
  日本型 欧米型
意思決定 稟議多い 即断
Prj寿命 改廃少 改廃多
Roi 考えない 重視
人間関係 チームワーク 個人力重視
人事制度 年功序列 成果主義

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