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みんなの評価:★★★★☆

伊藤直也@はてな、羽生田栄一@豆蔵etc.5人の書棚から厳選/この秋に読む! TOPエンジニアが刺激を受けた25冊
秋といえば読書──。というわけで、定番といえば定番すぎる企画をTech総研でもやってみました。ハードやソフトなどさまざまな分野で知られる5人のTOPエンジニアに自らの座右の書、5冊の厳選を依頼。計25冊、彼らはどんな本に刺激を受けているのでしょうか?
(文/森健 総研スタッフ/根村かやの) 作成日:05.09.21
あの人はどんな本を読んでいるのだろう?
 今回ご登場願った5人はいずれも各界で知られるエンジニアばかり。人力検索サイトをはじめユニークなサービスを次々提供する(株)はてなのCTO伊藤直也さん、オブジェクト指向のシステム開発で定評のある(株)豆蔵の羽生田栄一会長、ロボット製作で知られるロボ・ガレージのクリエーター高橋智隆さん、液晶関連では他社に追随を許さないLSIメーカーザインエレクトロニクス(株)の飯塚哲哉代表取締役、そしてTech総研では“電網ニュースウォッチャー”としておなじみ、キヤノン(株)の研究員、平林純さん。
「読書」とひと口に言っても、仕事用に要点のみ読むものもあれば、味わうように精読するものもある。また、本には特定目的のために「使える」ものもあれば、人生を変えるような書もある。彼らがエンジニアとしてどんな本を読み、どんなことを考えてきたか、参考にしてみよう。
※ 価格はすべて税込みです。新刊書店では入手が困難なものも含まれています。ご了承ください。
伊藤直也@「はてな」さんの5冊 すべてはブログに。書くために読むのが伊藤流
伊藤直也さん
伊藤直也
(株)はてな・CTO。ニフティ(株)を経て2004年9月より現職。自ら開発を手がける第一線エンジニア。
 普段あまり本は読まないが、本を買うときは「ブログ用に」選んでいるとのこと。役に立つと思ったことを自分が整理し、ブログに書く。そのツールとして本があるという認識だ。「面白くない本は必要な部分だけ破って残し、後は捨てることも」。今回そろえた本は、プログラマとしての自分の生き方を照らし出すものや、経営とはどうあるべきかという観点が中心。「自分の生き方を支持してくれるような本を読んでいるようですね」。
ハッカーと画家
ハッカーと画家
ポール・グラハム/川合史朗監訳/オーム社/2005/\2,520
◆ハッカーならではの共感本
 Yahoo!Storeのプログラムをつくったほか、Arc言語の開発者でもある著者がハッカーを巡る考察をしたエッセイ集。
 例えばソフトをつくるときは一人か少人数でプログラムを書くほうが効率的であるなど「この本を読んで、何度も『そうだよな』と共感した」。
イノベーションのジレンマ
イノベーションのジレンマ
クレイトン・クリステンセン/玉田俊平太監修/伊豆原弓訳/翔泳社/2001/\2,100
◆小さい会社の特性を実感
 革新的な技術や製品が出ると、トップを走っていた優良企業が失速するという現象を論理と実例で示した技術マーケティングの本。
「大企業では敬遠される売上が小さい事業が、小さい会社なら実行でき、成功につながる。そこが実感として理解できた」
キャズム
キャズム
ジェフリー・ムーア/川又政治訳/翔泳社/2002/\2,100
◆はてなもイノベーター
 世に商品が受け入れられる過程には、イノベーターという技術オタクが最初に入手し、その後アーリーアダプターなどから普及していく様子を記したマーケティング書。
「技術がどのように広まっていくか具体的に納得できた。モノづくりでも役に立つと思う」
「超」整理法
「超」整理法
野口悠紀雄/中公新書/1993/\777
◆カテゴリー分けは古い!
 情報はカテゴリー分けせず、時間軸に沿って並べていくのが最も効率的だと記した1993年のベストセラー。
 もともと伊藤さんはカテゴリー的な発想をする「整理魔」だったが、今は検索を軸とした発想に。「ウェブのプログラムでも応用できる考えだと思う」。
ニワトリを殺すな
ニワトリを殺すな
ケビン・D.ワン/高橋裕ニ訳/幻冬舎/2003/\1,050
◆「失敗を奨励」に納得
 ホンダの創業者・本田宗一郎のやり方を手本に、企業の体質改善のノウハウなどが寓話的に盛り込まれた本。
「『会議のときに反対するな』とか、二度目の失敗は論外だけど最初は何でも試行錯誤するので『失敗を奨励せよ』とか、企業のあり方で学ぶべきことが多かった」
羽生田栄一@「豆蔵」さんの5冊 新しいモノの見方は1日1冊の多読から生まれる
羽生田栄一さん
羽生田栄一
(株)豆蔵・取締役会長。オブジェクト指向技術の第一人者。同社代表取締役社長CEOを経て2003年2月より現職。
 取材時にずらり持ち込まれた本は古今東西、ジャンルも豊富な取りそろえの14冊。「迷った末に」選んだのが今回の5冊だ。また、手帳には几帳面な字でびっしりと「読むべきリスト」が並ぶ。読むペースは平均1日1冊という速さの多読派だ。「読書好きは学生のころから」で古本屋を回るのが趣味。「普通の本屋では手に入らない本を売っている」ためだ。「良い本は新しいモノの見方を教えてくれる。そんな本に出合うのが楽しみ」という。
忘れられた日本人
忘れられた日本人
宮本常一/岩波文庫/1984/\693
◆古きよき日本の探求へ
 在野の民俗学者として日本全国をくまなく歩いた著者が、対馬や四国などで辺境の土地に暮らす普通の人の言葉を伝えた名著。
「長老の会合の様子や山の生活などで、この本を読むと昔の日本には多様なライフスタイルがあったのだとわかる。いまの日本のほうが小さいですね」
物語の体操
物語の体操
大塚英志/朝日文庫/2003/\580
物語の構造は
ソフトウェアにも
  物語はトレーニングさえ積めばだれでも書けるようになるとうたい、構造解析から執筆を促すキャラクター小説執筆の入門書。
 小説の方法論を具体的に提示し、私小説以来の伝統を批判しているのも面白いが、同時に「その構造はソフトウェアパターンにも似ている。そこも興味深い」。
論理トレーニング
論理トレーニング
野矢茂樹/産業図書/1997/\2,520
◆モデリングの力を鍛える
 モデリングとはいかなる行為か、その基礎の基礎を、世界と言語の構造の対応関係として追い詰める。項番付きの箴言集の形式で短い文章の集合からできており、用語に慣れれば読みやすい。
「ソフトウェアエンジニアにとっては、『ロジカルシンキング』を実践している当代一流の事例として読むこともできると思います」
超越錯覚:人はなぜ斜にかまえるか
超越錯覚:人はなぜ斜にかまえるか
須原一秀/新評論/1992/\2,310
心のメカニズムから
独自哲学へ
  立命館大学講師の著者が学生のレポート数千本を題材に論じたユニークな書。
「事故に遭ったとき、恐怖はなくなり時間がゆっくり進み、『血が赤くてきれい』など、自己超越した感覚をもつ。そんな事例から人間の心のメカニズムに迫り、社会の構造にまで及ぶオリジナリティがあります」
物理数学の直観的方法:難解な数学的諸概念はどう簡略化できるか
物理数学の直観的方法:難解な数学的諸概念はどう簡略化できるか
長沼伸一郎/通商産業研究社/1987/\1,680
物理的概念を
身体感覚で理解
 物理的概念を、原理にさかのぼって身体感覚で理解させてくれる。出版当時はまさに革命的テキストだった。
「読むことで頭がよくなったと実感できる数少ない本。著者は、大学などの研究者ではなく、在野の人ですが、非常にオリジナルな発想をもって物理世界に臨んでいる。現在、社会現象にまでそのアプローチを広げようと孤軍奮闘中」
高橋智隆@「ロボ・ガレージ」さんの5冊 ロボットマンガの原点『鉄腕アトム』から始まった
高橋智隆さん
高橋智隆
ロボットクリエーター。2003年にロボ・ガレージを創業。Team OSAKAのキーメンバーとして、ロボカップ世界大会2004、2005を連覇。
「基本的にあまり本は読まないんですが」という高橋さん。選んだリストに共通しているのはロボットものと、「一人である」ということ。現在ロボ・ガレージを一人で運営することから、一人で奮闘する姿には心を惹かれるようだ。また、ロボ・ガレージで製作する「クロイノ」や「ネオン」といったロボットには、手塚治虫の『鉄腕アトム』の影響が強く出ている。読書もすべて、ロボット体験に始まり、ロボット製作に通じている。
鉄腕アトム:13巻
鉄腕アトム:13巻
手塚治虫/講談社(手塚治虫漫画全集)/2000/\561
©手塚プロダクション
◆ロボット製作者への原点
 数ある「アトム」の中でも最も人気を得たエピソード「地上最大のロボット」を収録。
 両親がもっていたので幼稚園のころから読んでいたという高橋氏。「世界にいろんな博士やロボットがいるという舞台設定にワクワクした」。そんな体験が現在につながっている。
プルートウ:1巻
プルートウ:1巻
浦沢直樹、手塚治虫/長崎尚志プロデュース/手塚眞監修/手塚プロダクション協力/小学館(ビッグコミックススペシャル)/2004/\550
◆自分なりの解釈を
 アトムの「地上最大のロボット」をベースに『MONSTER』などで名高い浦沢直樹が翻案した現在連載中の作品。
「浦沢氏が、名作『地上最大のロボット』を自身の世界観で描くように、私も自分なりの『鉄腕アトム』を創り上げていきたい」
怒りのブレイクスルー
怒りのブレイクスルー
中村修二/ホーム社/2001/\1,680
◆彼も一人、私も一人
 中村修二氏が、20世紀中の実現は無理だといわれていた青色LEDを独力で開発した前後の経緯を記した本。
 高橋さんが共感したのは「中村さんが一人で研究していたこと」。「一人ならではの葛藤や、だからこそ生まれる独創的発明という話が、大きな励みになった」。
天才の栄光と挫折:数学者列伝
天才の栄光と挫折:数学者列伝
藤原正彦/新潮選書/2002/\1,155
◆天才ってどういう人?
 ニュートンやラマヌジャンなど9人の数学者の生涯を振り返り、業績だけではなく、彼らの心象にも触れた評伝。
「自分も天才の仕事がしたいと常々願っていますが(笑)、本に登場する天才たちの発する輝きにゾクゾクします。数学者にも憧れます」
ロボコンマガジン
ロボコンマガジン
オーム社/1998創刊、隔月刊/\880
◆ロボットをつくろう!
 制御工学などの難しい理論よりも実際につくることをテーマとしたホビーロボット誌。
 高橋さんは1998年の創刊からの読者であり、最近では自身も登場することもある。「個人で扱える技術や部品を紹介し、子どもからエンジニアまで楽しめる。私の貴重な情報源でもあります」。
飯塚哲哉@「ザインエレクトロニクス」さんの5冊 個人的な読書経験は恥ずかしくて語れません
飯塚哲哉さん
飯塚哲哉
ザインエレクトロニクス(株)・代表取締役。(株)東芝にて半導体技術研究所LSI開発部部長などを経て、91年に創業。
 青年時代を除けば、読書はあまりしていないという飯塚さん。今回持ち込んだ本は5冊とも現在の会社経営に影響があるものだ。だが、ここで紹介したものは会社には関係は深くとも、どうも本当に自分自身の人生のものとは別物らしい。「そういう個人的な読書を紹介するのは恥ずかしいじゃないですか(笑)」と照れて語らず。とはいえ、紹介された本はいずれも技術系ベンチャーには役に立ちそうなものだ。
HPウエイ:シリコンバレーの夜明け
HPウエイ:シリコンバレーの夜明け
デービット・パッカード/伊豆原弓訳/日経BP/1995/\1,631
人生を変えた会社の歴史
  HPの創業者の一人であるデビッド・パッカードが記した同社の生い立ちの書。
 飯塚氏にとって、東芝社員時代の1980年から81年にかけてHPに駐在したことは「人生を大きく変える出来事」。家族的な社風や研究開発、経営の手法まで「見習うところは大きかった」。
東大工学部昭和四十一年卒 ◆未来を予見した先輩たちの言
 表題どおり、昭和41年に東大工学部を卒業した人たちへの1993年ごろのインタビュー集。
 企業の要職にある人たちが日本の行く末を語っている。「バブル崩壊直後だが、この時点で『従来の日本式経営ではダメ』『個人の時代が来る』と語られているのが興味深い」。

東大工学部昭和四十一年卒
横山一浩/はまの出版/1994/\1,575
日本の技術者:合理化と近代化の嵐に抗して/「大差」の時代/サムスン電子
日本の技術者:合理化と近代化の嵐に抗して
星野芳郎編/勁草書房/1969/\1,995

「大差」の時代
落合信彦/ザ・マサダ/1999/\1,575

サムスン電子
韓国経済新聞社編集/福田恵介訳/東洋経済新報社/2002/\1,680
◆「2冊で十分」というところ、あえてあと3冊
『日本の技術者』は556ページにも及ぶ1969年刊行の本。「当時の世相を反映してマルキシズムの色が強い。技術者は経営者と共犯となって富を搾取するという観点から、当時の労働者環境を露悪的に記している。それでも僕自身はあまりそうは思わなかった」と飯塚さん。
『「大差」の時代』は国際ジャーナリスト落合信彦の本だが、日本の労働環境の激変について述べられたもの。「働き手にとって、キャリア開発するのは個々人が主体になり、結果平等は終わりということを述べている。99年ごろ読み、個人的に共感した覚えがある」。
『サムスン電子』は同社の発展を描いた書。ザインエレクトロニクスは92年から98年まで同社と合弁会社を経営していた経験もあり、利益率重視など同社から学んだことは多いので、今回ピックアップしたが、「実際はちゃんとは読んでいない(笑)」とのこと。
平林純@「hirax.net」さんの5冊 「なぜ」を追求する科学者の視点が読書にも
平林純さん
平林純
人気サイト「hirax.net」を運営し、同サイト内でエンジニア的課外活動を精力的に展開 している。Tech総研ブログ上では、「平林純@『hirax.net』の科学と技術と男と女」を掲載中。
 技術者というより科学者としての視点が感じられるのが平林さんのリスト。心に触れた本は何度も読み返すために、取材時に持ってきた本もボロボロのものが多い。「壁にぶつかったりしているときには、自分が正しいと思えるものを読んでいる気がします(笑)」。「hirax.net」の連載コラム『できるかな?』で記される、ふとした疑問を科学的な視点で解析・実験してみるというスタイルはロゲルギストの影響を感じさせる。
物理の散歩道
物理の散歩道
ロゲルギスト/岩波書店/1963/\1,680
◆物理科学を身近な疑問で
 科学誌『科学』に連載された科学エッセイをまとめたもので、元学習院大学学長の木下是雄や流体力学の今井巧など当代の物理学者たちが匿名の「ロゲルギスト」としてつづっていた。
「遊び半分、科学半分の面白さが秀逸で、情報工学や物理の魅力を伝えたと思う」
科学技術を考える
科学技術を考える
グラフィケーション編集部/晶文社/1985/\1,575
20年前の課題は
未解決のまま
  企業PR誌『グラフィケーション』に連載されていた、科学者や技術者の対談集。
「『いまや、世界中が科学の力で結ばれているが、異民族間、異文化間の問題が何か一つでも解決したわけでもない』などの指摘は現在の状況そのまま。科学技術のあるべき姿を知ることができる」
ピーターの法則
ピーターの法則
ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル/渡辺伸也訳/ダイヤモンド社/2003/\1,470
有能でいるためには
出世しない!
  組織で出世するに従って、人が無能になっていくのはなぜかを論じた組織内力学のビジネス書。
「有能なプログラマが昇進していくと無能になるのは、その人がやるべきではないことをしているから。フラットな組織であればそういうことはないと理解できます」
数学者の言葉では
数学者の言葉では
藤原正彦/新潮文庫/1984/\460
◆繰り返し読み返した心の書
 数学者のみならず名エッセイストとしても知られる著者のエッセイ集。
 平林さんがこの本を読み返した数は「100回どころじゃない」。中でも『学問を志す人へ』という小品は「知的好奇心をもつこと、野心的であること……」とあり、何度も自分に問い返しているという。
掌の中の小鳥
掌の中の小鳥
加納朋子/創元推理文庫/2001/\567
気楽に読めるけど
視点もGood
  エッグスタンドというバーを舞台とした機転の利いたミステリーの連作短編集。
「卵を立てることができない人もエッグスタンドがあればそれができる。同じように、技術者が道具を作ればいろいろな人にいろいろな可能性が生まれる、というテーマがエンジニア的にいい」と平林さん。

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